ターニングポイント
雲の上にいる。


飛行機に乗ったときに同じような景色を見たことはあったけど。


自分の足でそんな高いところまで登ってきたのかと思うと、言葉にならなかった。


8合目の最初の山小屋からここまでは特にきつかったけど、登ってきてよかったと思った。




「雲の上に立った気分はどう?」


俺の隣に立って雲海を見つめていた陶子さんが、俺のほうに顔を向けた。


素直に感動を伝えるのが照れくさくて、俺はニヤッと笑いながら言った。


「なんか、優越感みたいなもん感じるかも」


「下界を見下ろしてる感じ?」


うんうん、と俺は頷いた。


陶子さんは歯を見せて笑っていた。



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