彼女のいるヒト
あたしにとって良くない今の状況で、授業中は唯一安心出来る時間だった。

ただ体育だけはそうはいかなかった。



「蒼ーっ」

「はいはーい」


ポーン


ボールはあたしの腕から跳ねて、奈緒美の腕目掛けて跳んでいく。

体育は選択でバレー。

運動好きのあたしには一番楽しい授業だ。


だから油断してた……。


バシンッ


「あだっ」


強烈な球があたしの後頭部にクリーンヒット!

ナイスボール!

……じゃないし!!


いやいや、ボールが当たるなんてあるあるネタじゃないか……

うん。落ち着くんだ、あたし


なんやかんや、自分の輪のボールに再び視線を戻す。

しかし、こっちのボールより先にまたしても強烈な球が後ろから。


「ひっ!」


今度は顔の横を


シュンッ


と通り過ぎた。


…………ん?

いやいやいや、連続して強烈な球が跳んでくるなんてあるあるネタ!

こっちのボールに集中、集中!


「蒼ちゃん大丈夫!?」

「あはは〜。ダイジョブダイジョブ〜」


同じ輪のなっちゃんが心配してくれた。
なっちゃんはあのメールの事も便乗しないで心配してくれる泣けるくらいイイ子。

気を持ち直して構えるあたしに、間髪入れず腰に強烈なアタックが入った。


「った!」

「蒼ちゃん!」

「蒼!ちょっと誰!?」



< 10 / 11 >

この作品をシェア

pagetop