彼女のいるヒト
いつも笑ってる新倉。

あたしを見て笑ってる新倉。

新倉に笑われてるあたし。

笑われテタあたし。


先週までは……ね。


『あの子』と付き合ってからというもの、新倉の口元は緩みっぱなし。

周りの子にはクールなんて言われてるくせに……。

あたしなんかに構わず笑ってる。


むかつく


「浮かれるなよ、ハゲ予備軍!」

「は!?」


あたしは新倉を置いて、彗星の如く(自分で言っちゃう)下駄箱まで走った。
体力には自信あるもんねー。へへっ。


下駄箱に着いて、スリッパに履き変える。

教室へ行こうと歩き出した瞬間、後ろから襟カバーを引っ張られた。


「うがっ」

「コラ、サル」


振り返れば、やっぱり新倉が。息一つ乱さずあたしを見下ろしている。


さらにむかつく!


「なーにしてくれとんじゃい!」

「なーにじゃねーぞ。俺より先に教室入る気か!」

「入る気。じゃっ」


そしてまたあたしは彗星の如く(スルーで)階段を駆け登った。

数段後から待てだかなんだか言いながら追っ掛けてくる新倉。


待つかっつーの!


しかし、気持ちとは裏腹に新倉に追い付かれ同じ段を駆け登る。

そのまま教室まで競っていたのに、後一歩というところで新倉に抜かされ先にドアを開けられた。



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