彼女のいるヒト
掃いても掃いても舞落ちてくる茶色い落ち葉。
掃いても掃いても風に飛ばされていく茶色い落ち葉。
まったく
気分もブラウンだぜ……
「早く取ってよ…」
「お前がちゃんと掃かねーからだろ!」
「あんたが取るの遅いんでしょ!」
むかつくな〜!
あたしは今居残り掃除をしている。
否。
させられている。
……新倉のせいで。
昼休みの事。
廊下をただただ歩いていたあたしをつまずかせ、あたしに追い掛ける理由を作り上げ、職員室前を全力疾走。
そこへたまたま出て来た教頭に新倉が突っ込み、持っていたサイダーをぶっかけ、あたしまで突っ込んでしまい三人で畳んだ布団のように廊下に倒れ込んだ。
そして当然の如く説教をくらい居残り掃除を申し付けられ、今に至る……。
つまり新倉のせいで。
紛れも無く新倉のせいで。
すっかり部活に打ち込む生徒達が、遅々として進まない落ち葉履きを物語る。
転がって来た野球部の球を拾い上げた新倉。
「はぁ〜、部活して〜」
「サッカー馬鹿」
「や!馬鹿じゃなくて野郎だろ!勉強もお前より出来る」
「うざー」
そう。
新倉は強豪と呼ばれるうちの学校のサッカー部のレギュラーで、おまけに成績はいつも一桁の……(認めたくないけど)秀才。
だから好きになった訳じゃないけど……
「一輝君」
不意に、か細く可愛い声が聞こえた。
『あの子』の声が。