彼女のいるヒト
「あの子だよ」
「恨まれてんだろーね」
「自分で送ったとか!?」
「うける〜。でも、さすがに引くわ!」


空は朝から晴れて爽やか。
なのに、この不愉快な囁きはあたしに向けられているみたいだ。


何?
何のこと?
恨まれてる?
引く?

あたし

なんかした……?



得体の知れない不安と腹立たしさで気持ち悪いくらい。
昇降口まで行くと奈緒美があたしを待っていた。


「蒼っ!!」

「奈緒美〜っ」


奈緒美はあたしを見ると心配そうに駆け寄ってきた。

奈緒美もみんなの態度に気付いているんだ。


「ねぇ、みんな変じゃないっ?」

「蒼。なんか今、変なメールが回ってるみたいなの」

「え、変なメール?」

「うん……。ここじゃ話しにくいからあそこ行くよ?」

「うん」


あたし達は昇降口から校舎に入り、あそこへ向かった。

三階の奥の非常階段へ。

そこは生徒はもちろん、先生だって滅多に現れない、あたしと奈緒美の語り場になっている。

非常階段まで来ると、周りの囁きが消えて少し気分が落ち着いた。

ふと奈緒美を見れば渋い顔で。


も〜っ
何が起こってるんだ……?


「奈緒美、変なメールって何?みんな、あたしの事『恨まれてる』とか言ってたと思うんだけど……」

「あたしの所には送られてないけど、コレ!今朝、宏(ヒロ)に来たやつ」


宏君は奈緒美の彼氏。
その彼から転送されたと思われる、奈緒美宛てのメール。

そこには悲惨な嘘が綴られていて、読んでいくうちに怒りが沸き立つ。
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