記憶のかけら
一人暮らしが長くなった証拠なのか、それとも村田さんとの事からか、つい口から言葉が出てしまう。でもそれは、誰かも同じ様にしているので仕方ないとして、気にせずちゃぶ台に向かう。
「あ、れ……?」
昔六人で暮らした事があるので、茶の間にあるのは大きな八か十人掛けのちゃぶ台。その重みのある茶色のその台の下座に、見慣れない一冊の本が置かれてあったのだ。空と海の境目が曖昧な風景を背景に、陸と海とにそれぞれ一種類の動物が描かれた表紙。陸の灯台に黒猫、その足元の海に銀色に輝くイルカ。
「猫とイルカ……?」
そのまんまのタイトルの、画集のようなきれいな表紙の本。村田さんの忘れ物だろう。その事にすぐに気が付いたのだが、手はついつい、そのきれいな表紙をめくってしまっていた。
「あ、れ……?」
昔六人で暮らした事があるので、茶の間にあるのは大きな八か十人掛けのちゃぶ台。その重みのある茶色のその台の下座に、見慣れない一冊の本が置かれてあったのだ。空と海の境目が曖昧な風景を背景に、陸と海とにそれぞれ一種類の動物が描かれた表紙。陸の灯台に黒猫、その足元の海に銀色に輝くイルカ。
「猫とイルカ……?」
そのまんまのタイトルの、画集のようなきれいな表紙の本。村田さんの忘れ物だろう。その事にすぐに気が付いたのだが、手はついつい、そのきれいな表紙をめくってしまっていた。