記憶のかけら
 向こうはそんな私に慣れてしまったのか、変わりなく言葉を続ける。
 たった数歳の違いなかのにこうも開きがあると、悔しくて何も言えなくなる。
 言葉に詰まってしまうのだ。
「30分後に伺いますので、顔を洗って目を覚ましておいて下さいね」
 私が何か言い返す間をおいてから、彼は「それじゃあ」と電話を切った。
 薄暗い部屋の中、ツー、ツー、という小さな音だけが耳に聞こえてくる。
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