記憶のかけら
氷
食欲はなかったのだが、水でも飲もうと台所に入った途端、咎めるような唸り声がした。食事に五月蝿い父の小言かと思ったが、何のことはない、冷凍室が氷を吐き出す音だった。
「昔は考えられなかった」
昔は、氷は自分で作るものだった。縦2列、横何列かの仕切りのついた長方形の入れ物。四角っぽい氷を作る箱。そこに水を流し入れ、冷凍室に入れて氷は作った。“私の”昔は。
でもそれも、父の時代には「考えられなかった」事だったそうだ。何より氷を作る以前に、電気の冷蔵庫がなかった事もあるそうだ。
「今じゃ考えられない」 今の時代は、水さえ小さなタンクに入れておけば自動で作ってくれる。それもきれいな―ろ過した水の―氷を作る。便利な世の中だ。
でも、遊びはなくなった。
「昔は考えられなかった」
昔は、氷は自分で作るものだった。縦2列、横何列かの仕切りのついた長方形の入れ物。四角っぽい氷を作る箱。そこに水を流し入れ、冷凍室に入れて氷は作った。“私の”昔は。
でもそれも、父の時代には「考えられなかった」事だったそうだ。何より氷を作る以前に、電気の冷蔵庫がなかった事もあるそうだ。
「今じゃ考えられない」 今の時代は、水さえ小さなタンクに入れておけば自動で作ってくれる。それもきれいな―ろ過した水の―氷を作る。便利な世の中だ。
でも、遊びはなくなった。