記憶のかけら
 自分では実際にやろうとしなかったが、昔のやり方なら、いろいろ出来たものだ。水の代わりにジュースを入れて、アイスキャンディーみたいなのを。水の中に小さな草花を入れて、愛でて楽しむことをしたり。
「なんか、つまらないな……」
「それなら、カーテンでも開けませんか?」
 薄暗い部屋の中でも分かる、優しそうな笑顔。電話の声にも慣れないのに、顔は尚更だ。
「また顔を洗う代わりにシャワーですか? 髪がまだ濡れたままですよ」 勝手に背後に立ち、ひとの髪に触れる村田さん。私の代わりに冷蔵庫が唸ってくれた。
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