死発列車
あの事件から早くも5年が過ぎていた…そして釈放された今、この2両目にいる吉田、3両目にいる松川それぞれに復讐をする絶好のチャンスだった!

そしてその事件を担当した刑事が、吉田 槙二郎(よしだ しんじろう)である。30代手前という、若くして警部を務め絶大な信頼を得ている吉田は、事件を解決した当時は警部補として犯人・永沼を突き止めた。吉田にとっては、せっかく捕まえた犯人を5年程で釈放されているのを知ると、複雑な気持ちになった…
今までこの車両内で自分が刑事だとは言えなかった…。爆弾となると常に松川を頼っていたからだ…。後に刑事だと気付かれたら警察はこんな事件で無力なのかと思われてしまう…。特に松川がいないと自分は無力になってしまう…そんな気がしてしょうがなかった…。

「…ただ今日もそこら中をぶらぶらしてるだけですよ吉田さん…。」永沼は動じなかった…。
「…お前…!この爆弾はお前が…」
「…んなはずないじゃないですか…。俺はこんなくだらない爆弾なんか作りませんよ…………………ただ吉田、よく聞けよ…?」
「……なんだ…!」
「…俺は今でも爆弾に関する知識はある程度は残っている…。つまりお前を殺すことだってできるんだぜぇ……?」
「…何考えてやがる!」
「……鈍いですねぇ……………………復讐ってやつですよ…。」
「…てめぇ!警察をなめてんのか!?」
永沼は甲高く笑った。
「…クククッ…大丈夫ですよ…。この車両を殺る(やる)ことはしない…。けどな………………………今日お前の家に爆弾を仕掛けたさせてもらったぜ…」
鋭い目で下から吉田のことを睨み、不敵な笑みを浮かべた。
「……てっ…てめぇ!」
「…さらにな…3両目には松川がいるんだぜ…?」
「…何だと……!?」
吉田が3両目を覗いて松川の姿を確認した。
「…うっ……うそだろ…!?…まっ……松川先輩……」
吉田が後ずさりした。
「…クククッ……分かっただろ…?」
「…お前何するつもりだ!?」吉田の顔には汗がにじみ出ていた。
「…………賭けをしないか…?」
吉田はもはや永沼の話をのむしかなかった…
「……どういう賭けだ…」
「…まぁ…この状況から分かるだろ…。結局は松川かお前のどちらかが死ぬことになるんだ…。」
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