死発列車
90分前にさかのぼる。
「ん〜〜……よしっ!」
今日も時間通り起きれた。ベッドから出て、飼って1年になるセキセイインコに挨拶する。
「チェリーおはよ〜!今日も元気してるんだぞ!」
鳥小屋の間から第一間接ぐらい人差し指を入れてチェリーの首もとをくすぐった。
チェリーは気持ち良さそうに目を閉じたり開いたりした。

坂下 逞(さかした とおる)。実は明日で23歳を迎える。親元も離れて彼女もいない今、その誕生日を祝ってくれる人すらいない。正直寂しいが、まぁそれもありなんだなと…最近はそんな思考回路が癖となっていた。

肌は以前から白く、ちょっとでも白いものを見ると『お前と同じだ』とからかわれていた。

近くのタイヤ工場で就職したが、タイヤ工場で働く上で必ず自分の車のタイヤをその工場で製造しているタイヤにしなければならず、入りたての坂下にはその出費が響いて最初の給料日まではひもじい生活を強いられた。

もっと勉強しておけばよりいい会社に就職できたのになぁ…

自業自得だった…。

ハタチになってから一年一年は異常に早く過ぎていった。
そんなある日、突然中学時代の同級生らに呼び出された。何やら学校の体育館裏に埋めたタイムカプセルを開けるらしい。
きっと中学時代の思い出とか語り合うのだろうが、正直あまり良い思い出がない。
中学生だった私は物静かで特に相手にもされなかった。運動会でも代表として選ばれなかった人、つまり残り者だけが『混合リレー』と呼ばれる種目、通称『ザコリレー(「The 混合リレー」の略)』に毎年出ていた。
そんなこんなで、思い出そうとしてもなかなか楽しいエピソードはなかった。むしろ小学校での思い出の方が鮮明だった。
重い足どりだが今となっては懐かしい顔ぶれとして注目が浴びるだろうと思い、それなりにテンションを上げて始発の電車で山梨県へ向かう。そんな私を愛情を持って育ててくれた両親にも再会でき、さらに期待を抱いている。
今日はゆっくり親孝行をしてやらないとな…。

昨日買い溜めておいたコンビニ弁当を取り出し、その1つを朝食として食べる。残り2つはお昼に食べるつもりのため、これまたコンビニの袋に入れた上に縛ってバッグに押し込んだ。

最後の一口のハンバーグをほお張った。戸締まりを確認し、荷物をまとめて、準備が整った。
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