死発列車
「…な……なんで言わなきゃいけねぇんだよ…!」
斑目が立ち上がる。
「…あんたたちは何か言えない理由でもあんのか?」
坂下は冷静に答えた。
「…違うだろ!今は電車を…!」
「…私は千葉の方へ会社の出張があるんだ…」
斑目を片腕で抑えながら中越が話した。
「……千葉に新しいテーマパークを建造する計画が持ち上がっていてね。更なる千葉の繁栄を期待しているんだ。」

そして…

「……チッ…!…お…俺は…」
斑目も舌打ちをして嫌々だが話し始めた。
そして坂下、麻倉と続く。

「…じゃあ次、あなた…?」
「…宮田と申します…。」
この話し合いを始めるきっかけを作った人だ。坂下にとっても先程から気にかかる人物でもある。

どこかで会ったっけ………?宮田……?

「…茨城で配達業をやっていまして…」
「……あっ!!」
突然 大声を出して宮田の話を遮ってしまった。
「……あの時の…!」
「…あぁ〜!!」
宮田も私を指さして大声をあげた。どうやら思い出したらしい。

宮田 千里(みやた ちさと)。若いのに珍しいが彼女は郵便配達の仕事をしている。
しかし私の中ではこの人のイメージはよくない。
以前 私の家に贈り主が分からない小包を宮田は届けに来た。中身は私が壊してばかりの腕時計だったのできっと母が新しく送ってくれたのだろうと思った。腕時計の話は母親にしかしておらず、そのことをかなり気にしていたからだ。時計が届いたことを話したら随分安堵の声をあげていた。実は時計が壊れた原因は宮田だった。以前別の配達に来たとき、かなり重い荷物を抱えていたため宮田は荷物を靴棚の上に置いた。しかしその棚の上には時計が並べてあったため荷物の重みでその時計が壊れてしまった。彼女はかなり気にしているようだったが、たいして大切にしている時計ではなかったため大丈夫だと伝えた。新しく届けてくれたとしても別に腕時計はしていなかった。家に置いてきた今になってみれば母親に会うのだったら時計をはめておけばよかったと後悔している。
そんなこんなで彼女にはよい思い出がなかった。でもなぜこんな時間の電車に乗っているのだろうか…?

「…先日はごめんなさい…!」
眉をひそめて何度もお辞儀した。
「……いやいや、もう大丈夫だって。また新しく親が送ってくれたし。」
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