死発列車
「…ホントですか!?よかったぁ〜!」
なぜか彼女が述べた『よかった』が別の意味に聞こえた…。ホントによかったと思っているのだろうか…?

「……次!…お前だよっ!」
斑目が今にも襲い掛かってきそうな気味の悪い男性に言い放った。
ボロボロの服を着て、やや猫背ぎみの男性はボサボサの長髪から薄気味悪い暗い顔が見え、汚れた歯が口から顔を出した。
「…俺か……?」
声も不気味だった…。
「…あ…あぁ…。」
斑目もさすがにひいているようだ。

「……ちょっと…最後にしてくれねぇかな…」
「…は!?」
「…こういうの初めてだから緊張しちまうんだ……」
乗客が顔を合わせて難しい顔をした。
「……わ…分かった…。最後にちゃんと話せよ…。…んじゃ次!」
車内はしんみりした空気を放つ。

「……は…はい…。私は土浦市で営業をやっとる坂庭 庸一(さかば よういち)と申します…」
コクコクと小さく頷いて眼鏡の奥から見える目は非常に謙遜だった。眉をひそめた目は下から上を見て、ホントに営業マンとしてやっていけているのか気になった。
「……も…もちろん今日も土浦で営業するためにこうしていつも乗っている電車に…。」
「…このようなことをする人に心当たりはないんですか…?」
宮田が珍しく質問した。
「………全く記憶にないです……。すいません!」
彼は深くお辞儀をした。

少しの沈黙の後、童顔な男性が話した。
「…んじゃあ……次は僕が……」
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