死発列車
………
……………
「……わあぁぁー…!」
長い沈黙が途絶えたのは気絶していた女性が目を覚ましてからだった。まだ止まらない電車に乗っていることを思いだし、恐怖感から震えた声を発した。
「…落ち着いてください!…ほら、しっかり…!!」
中津がその女性の肩をつかんで揺すったが一向に女性はパニックに陥ったままであった。
「……もうあたしたち死ぬのよ…!」
涙が大量に溢れ出た。
「…とりあえず何か覚えていることは…!?」
「…ある訳ないじゃない!!なんで逆方向に向かって速度を上げているのよ…!!……夜勤から帰って息子たちの食事を作らなきゃいけないのよー!!」
今度は逆に中津の腕を掴んで揺すった。
その光景は悲しいものだった。
中津はしばらく黙ったまま女性を哀れんだ目で見ていた。他の乗客もそうであったに違いない。自分もまでが眉をひそめているのに気付いた…。
気を戻しゆっくりと中津は口を開いた。
「……と…とりあえず…落ち着いてここにいてください…俺たちが何とかしますから…」
といっても操縦の仕方も分からない…。何も術はなかった…。
女性は先程まではいかないが手で顔を覆いしくしくと泣き続けた…。