死発列車




「お母さん…あたしやっぱダメかも…」


開始5分…子供にとっては不利なゲームだった…。



「何言ってるの!?雫、ちゃんとつかまりなさい!雫!!」




まだ中学生の永幸 雫(ながさち しずく)は今年受験生だった。母 霞(かすみ)にできた唯一の娘で、女手ひとつで愛情を持って育ててきた。父親は小さい頃に交通事故で亡くしたため、雫は『父親』というものを知らない。
学校では授業参観になぜ男の人がいるのかが理解できなかった。
休みの日には霞に昼食を作ってあげて、よく焦がしたりもしたけど、霞は毎回おいしいと言ってくれていた。
雫は霞のことが大好きだし、霞は雫のことをとても愛していた。









しかし…








そんな親子を今や誰も助けることができない…





「お母さん…腕がもう辛い…それにこのままがんばってもお兄さんたちの方が勝つもん……」




「雫!お願いだからお母さんを一人にしないで…」
「そうだよ、雫ちゃん諦めちゃダメだよ!!」

今乗客ができるのはそのように励ますだけである。ラインのその一言に彼女に同情する他の乗客も応援しはじめた。




しかし…




「ごめん…お母さん…」
「雫!!…お願い、やめて!!」
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