死発列車
彼の意志が堅い以上、何を言ってもダメなようだ……
そして…
「…照れ臭ぇけど……本当にありがとな……!……お前らは生きてくれ…!」
「…やめろっ!!!」
左藤は微かに笑みを浮かべながら静かに消えた…
左藤の吊り革には赤ん坊だけが残った……
「……うわぁぁあああああ!!…わぁあああああ…!!」
もはや目の前の厳しい現実と悲しみに泣くことしか出来なかった…
立川といっぱい泣いた…
涙が枯れて無くなるまで泣いた……
思えば彼は最初から最後まで心が強い男だった…
最初に逃げ出そうとしたとき危険を承知でドアをこじあけようと試みたのも彼だ…
自分たち11人は一回の爆発だけでひるんでしまい、結局 彼の手助けすらできなかった……
さらに、まず吊り革に手をのばしたのも彼であった…
そして赤ん坊を引き受け、最後まで赤ん坊を守った。
それは意志の強い彼が自分のプライドを捨てたことで生まれた、最初で最後の出来事だった。