死発列車








地獄のような時間だった……










その日は、名古屋にいる祖父母へ会いに行く予定だった。
小学生のときに会ったとき以来だったため、今にもどこからか懐かしい匂いがしてきそうだった。



美倉 竝(みくら なみ)は来年で高校を卒業する。

今年の学校の冬休みは短期バイトをするはずだったが、祖父母に遊びに来てもいいと言われてすぐに明日からのバイトをキャンセルして名古屋に行く仕度をした。



青春18切符で行く長旅のため、少しでも早く向こうに着きたかった。それで高鳴る胸を抑えきれずに朝の始発に乗りこんだ。




おばあちゃんとおじいちゃん、元気にしてるかなぁ…

東京に着いたときなんかお土産でも買っていこ…。








『…ナミ!始発の電車に遅れるよ!?』

自分より早起きしていた母に起こされ、目をこすりながら着替える。
『ぅ~ん…………』
顔を洗い、寝癖を直したら、お気に入りの赤いバッグに着替えと財布、鏡、携帯、お菓子、そして昨日買っておいたファッション誌を入れた。
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