死発列車
[2両目]
「…なんで見つからないんだ…」
中年の男性が泣きながら爆弾を探している。
家族思いの美神 晋哉(みかみ しんや)はこの時も頭の中は家族のことでいっぱいだった。
必ず出張先の勝田から帰ってくるときは 家族全員の好物である駅の中にあるケーキ屋でロールケーキを買ってきてあげていた。
美神は家族の喜んだ顔を見るだけで幸せだった…
しかし不幸に襲われている今、家族の悲しむ顔しか浮かばない…
始発に乗ってようやく東京に帰宅できると思ったのに……
座席にちょこんと置かれたロールケーキが入っている箱が美神の背中を寂しく見据えていた…
もし…爆弾を見つけられなかったら…見つけたとしても解除できなかったら…
そう考えるだけで涙が溢れて頬を伝っていった…
もう家族に会えない…娘のあの笑った顔を見ることも、2歳になる息子が最近言ってくれるようになった『パパ』という言葉が聞くことも、そして妻の幸せそうな笑顔も得意の料理も味わえなくなる…
いやむしろ……
私が家族からいなくなる…………