桃陽記
明る過ぎるくらいにふりかかっていた月の明かりは、森に入るとその背の高い木の上部に鬱蒼としげる葉によって大半は届かず、所々、白い砂が細く流れてくるように僅か差し込んでいた。
大きな木が、まるで神殿の柱の如く、静まり返ったまま夜闇に佇んでいた。
少女は、そんな森の中をキョロキョロと見渡しながら進む。
最初に彼女を見つけたのは、大きな人面梟だった。
消音性を誇る白い羽毛、大人が両手を広げた程の顔面には人肌に似たそれがあり、人の頭程もある茶がかった黒目は興味深い様子で遥か目下の少女に向けられている。
本来クチバシが覗くそこには、大きな鷲鼻があった。
人と同等、あるいはそれ以上の頭脳を持つ彼らの存在は、人を寄せ付けぬその森の特性からあまり知られていない。
しかし、人の存在を嫌っているわけではなく、むしろその知識欲のために人に興味を持つその人面梟はしゃがれた老人のような声で遥か下彷徨う少女に声をかけた。
「ヒトの子よ。
この森に迷い込んだか?」
突然降ってきた声に少女はピクリと反応し、キョロキョロとあたりを見る。
大きな木が、まるで神殿の柱の如く、静まり返ったまま夜闇に佇んでいた。
少女は、そんな森の中をキョロキョロと見渡しながら進む。
最初に彼女を見つけたのは、大きな人面梟だった。
消音性を誇る白い羽毛、大人が両手を広げた程の顔面には人肌に似たそれがあり、人の頭程もある茶がかった黒目は興味深い様子で遥か目下の少女に向けられている。
本来クチバシが覗くそこには、大きな鷲鼻があった。
人と同等、あるいはそれ以上の頭脳を持つ彼らの存在は、人を寄せ付けぬその森の特性からあまり知られていない。
しかし、人の存在を嫌っているわけではなく、むしろその知識欲のために人に興味を持つその人面梟はしゃがれた老人のような声で遥か下彷徨う少女に声をかけた。
「ヒトの子よ。
この森に迷い込んだか?」
突然降ってきた声に少女はピクリと反応し、キョロキョロとあたりを見る。