幻想美術館
中から一匹の白猫が、二本足で立って僕を迎えてくれた。

白猫はタキシードを身にまとい、ステッキを持っていた。

僕が、いぶかしげに見ていると、コホンと咳ばらいをして言った。

「どうも。私は、当美術館の主でございます。」

声だけ聞くと、人間の声そのものだった。

白猫がステッキを、くるっと一回転させると、僕はフワッと空中に浮かび上がった。

怖くて目をつぶると、生あたたかい空気の、肌をなめまわすような感触に襲われた。
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