涙は煌く虹の如く
「ジャリジャリジャリ……」
「ザリッザリッ……」
自転車の音と共に今度は足音も鮮明に聞こえてきた。
美久と集団の距離はもうすぐそこまで縮まっていた。
「てめぇ、シカトすんじゃねぇって言ってんべ…!!」
更なるリーダーの怒声だった。
周囲が閑静なことも手伝い、ありえないことなのだが狭い島中に響いているのではないかと思うほどの大きさだった。

「………」
言葉が威圧的になればなるほどどうすることもできないでいる美久がそこにいた。
美久はこのわずかな時間の中で集団が今までの態度よりも遥かな慇懃さを感じていた。
(そういえばコイツら全員夏季講習受けてたんだっけか…?町さ行ってきたんだ…?何かおもせくねぇことあったんだな…)
自分が”腹いせの道具”に使われようとしている…
「………!」
そう思うと美久の中に沸々と怒りの感情が沸いてきた。
「スクッ…!!」
美久は立ち上がり鋭い視線を集団に向けた。

「ツカツカッ……」
怒りを目に宿した美久。
同じく怒りを内包した歩き方で集団に向かって行った。
「……!?」
「ちょ…何よぉ…!?」
集団の女子たちが敏感に反応し、驚きを露にする。
「何だ、コイツ……?」
少年たちもたじろぐ。
「フッ……」
が、リーダーだけは気圧された様子もなく冷静に美久を観察しているような印象だった。

「ツカッ…!」
そしてリーダーの前に美久が立ちはだかった。
「どうしたっつうのや…?キレたのか…?」
リーダーはあくまでも精神的優位に立たんとすべく、どこか見下したような口調で美久に問うた。
「………」
美久の目には涙が溜まっており、今にも流れ出しそうであった。
しかし、彼女は必死で堪え、自分の感情をぶつけようともがいているようだった。
その心苦しさを察しているのか否かは不明であったが容赦ない言葉を浴びせるリーダー。
「あぁ、元からキレてんだっけか…!?町さ行ってもなかなか治んねぇもんだなや…!」
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