涙は煌く虹の如く

「ダダダッ…！」
丈也は美久のもとへ向かった。
「ザッ…」
そして気を失っているらしい美久を抱きかかえると安全そうな草場へ横たえさせた。

「んだよ、てめぇっ…！」
ようやく事態を把握したのか少年が怒鳴る。
「キッ……！」
踵を返す丈也。
「ダダダッ…！」
「うるさいっ！寄って集って女一人を虐める奴らに名前なんか教えねぇよっ！それよりそこの女たち、さっさと離れろ！」
走りながら怒鳴り返す丈也。
「キャア……！」
少女たちは逃げ出した。
丈也は怒鳴ってきた少年の前に立ちはだかった。
「ボッカァッ…！」
「ガブゥッ…！」
そして右肘を浴びせた。
「ちきしょう…！」
「てっめぇ…！」
一人、また一人少年が丈也に向かってきた。
「ドゴッ、ドゴッ…」
それを丈也は鮮やかにかわし、一撃を加える。

「なぁ、お前ら…！教えてくれよ…！何だってこんなバカなことをするんだ…！」
丈也は暴れながら誰とはなしに質問をぶつけた。
「バカなこと…？普通に集団生活できない奴に注意しているだけなんだぜ、俺たちゃ…！」
ようやく起き上がったリーダーが仕返しの機会を窺いつつ答えた。
「人と違う奴はウゼェんだよ…！」
「そんなの…そんなの間違ってるに決まってらぁっ…！許さねぇ…！」
そう怒鳴り返すと丈也は再び標的をリーダーに定めた。

「シュッ…」
前蹴りを繰り出す。
「ドッゴォッ…！」
「ブエッ…！」
予期せぬ一撃を喰らったリーダーがまた悶絶した。　　　
「ドゴッ、ドゴッ……！」
手を緩めず追撃を加え続ける丈也。
丈也の頭は真っ白になっていた。
だからそれからのことはよく覚えていない。
ただ、どうして自分がこんなに喧嘩が強いのかを疑問に感じ、
そして、どうして自分がこんなに人を殴れるのかを不思議に思った。

それから数十分後。
河原には丈也が一人仰向けで倒れていた。
「ウーン……」
口の中を切っているようで端から血が流れている。
意識はあったが疲労困憊のようで目を閉じたまま呻く丈也。