涙は煌く虹の如く
「ピタッ……」
「ワッ……!」
突然冷やっこい感触を額に感じ、驚いて丈也は飛び起きた。
「キャッ…!」
今度はそれに驚いた声が丈也の耳に飛び込んでくる。
丈也の眼前には濡らした布切れを持った美久が立っていた。
「美久……」
「丈ちゃん……」
「………」
「………」
二人の間に沈黙が流れる。
しかし、それは気まずさのような類のものではなく、互いが互いを気遣っての態度であったし、それを丈也も美久も直感で感じ取っていた。
妙に心地の良い空間だった。
特に丈也には林の一件があったので余計にそう思えた。
「サラサラサラサラサラ……」
川の流れる音と、
「ピーーーーッ…!」
名前などわからないが鳥の鳴き声だけが聞こえてくる時間。
その沈黙を破ったのは美久だった。
「丈ちゃん……」
「うん……?」
「迷惑かけてしまったなや…おら…いや、私…」
「そんなことないって…それより美久こそ大丈夫か…?」
「ウン…大丈夫。どこもケガしてないよぉ…んでも、丈ちゃんいっぱいケガしてるから…」
「ケガ…?そういやアイツらは…?」
「みんな逃げてった…丈ちゃんケンカ強いなやぁ…一人でだおんなぁ…」
戦っている間本当に頭が真っ白だったのだろう、丈也は全然戦況を覚えていない自分を少し恥ずかしく思った。
その恥ずかしさの中には気を失っているとばかり思っていた美久が自分の姿を見ていた、という部分もあったのかもしれない。
「痛っ…!」
忘れかけていた痛みが再び丈也を襲う。
痛みの先を見ると左肘を思い切り擦り剥いていた。
「あっ…!」
「ん……?」
美久がさっきの布切れを丈也の肘にあてがった。
「クゥッ…!」
沁みるのか声を上げてしまう。
と、ある異変に気づく丈也。
「美久……!」
「何……?」
「この布……」
美久はワンピースの胸の部分を破いてハンカチの代わりにしていたのだ。
当然上手く破れなかったらしく傍目から見てもみっともない状態になっていた。
「ダメじゃん、それじゃ家に帰れないぞ…!」
「そんなことないよ、大丈夫だってば…」
「大丈夫じゃねぇよ…!」
立ち上がる丈也。
彼は美久のもう一つの異変に気づいていた。
「ワッ……!」
突然冷やっこい感触を額に感じ、驚いて丈也は飛び起きた。
「キャッ…!」
今度はそれに驚いた声が丈也の耳に飛び込んでくる。
丈也の眼前には濡らした布切れを持った美久が立っていた。
「美久……」
「丈ちゃん……」
「………」
「………」
二人の間に沈黙が流れる。
しかし、それは気まずさのような類のものではなく、互いが互いを気遣っての態度であったし、それを丈也も美久も直感で感じ取っていた。
妙に心地の良い空間だった。
特に丈也には林の一件があったので余計にそう思えた。
「サラサラサラサラサラ……」
川の流れる音と、
「ピーーーーッ…!」
名前などわからないが鳥の鳴き声だけが聞こえてくる時間。
その沈黙を破ったのは美久だった。
「丈ちゃん……」
「うん……?」
「迷惑かけてしまったなや…おら…いや、私…」
「そんなことないって…それより美久こそ大丈夫か…?」
「ウン…大丈夫。どこもケガしてないよぉ…んでも、丈ちゃんいっぱいケガしてるから…」
「ケガ…?そういやアイツらは…?」
「みんな逃げてった…丈ちゃんケンカ強いなやぁ…一人でだおんなぁ…」
戦っている間本当に頭が真っ白だったのだろう、丈也は全然戦況を覚えていない自分を少し恥ずかしく思った。
その恥ずかしさの中には気を失っているとばかり思っていた美久が自分の姿を見ていた、という部分もあったのかもしれない。
「痛っ…!」
忘れかけていた痛みが再び丈也を襲う。
痛みの先を見ると左肘を思い切り擦り剥いていた。
「あっ…!」
「ん……?」
美久がさっきの布切れを丈也の肘にあてがった。
「クゥッ…!」
沁みるのか声を上げてしまう。
と、ある異変に気づく丈也。
「美久……!」
「何……?」
「この布……」
美久はワンピースの胸の部分を破いてハンカチの代わりにしていたのだ。
当然上手く破れなかったらしく傍目から見てもみっともない状態になっていた。
「ダメじゃん、それじゃ家に帰れないぞ…!」
「そんなことないよ、大丈夫だってば…」
「大丈夫じゃねぇよ…!」
立ち上がる丈也。
彼は美久のもう一つの異変に気づいていた。