涙は煌く虹の如く
ところが、
「ポツッ…」
釣りを邪魔せんばかりに丈也の頬に水滴が当たった。
「チッ…」
雨が降り出してきたのだ。
「ポツッ、ポツッ、ポタポタポタ…ザァ…」
雨足はあっという間に強まった。
「ザァァァァァァァァ…」
川のせせらぎの音もどことなく険しくなる。
「………」
だが、丈也はそこを動こうとはしなかった。
濡れるに任せ丈也は竿を構え続けた。
「ザァァァァァァァァ…」
雨は全く止む気配を見せない。
「パチャパチャ……パチャ…パチャパチャパチャ…」
川面には幾重も波紋が浮かんでは消え浮かんでは消えを繰り返している。
もはやザリガニどころかメダカ一匹さえも釣れる状況ではなかった。
「………」
それでも丈也は竿を垂らしたまま波紋が無数に浮かび続ける川面をうすぼんやりと眺めていた。
「タラッ…ポタポタ…」
丈也の前髪はとうに濡れそぼり髪先から水滴が滴り落ちる。
それでも丈也は動じない。
「ヌチャ…ヌチャ…」
丈也の着ている白いプリントTシャツも過剰に水分を含んで彼の肌にまとわりつく。
「ウッ………」
時折体勢を変えると不快感を覚えたが、時既に遅し。
そんな不快感すらも今の丈也にとっては必要なものであるように思われた。
腰を下ろしていた川縁もあちこちに水たまりができており、当然丈也のジーンズも濡れていた。
「おっ………!」
「グイッ…!」
手応えを感じたのだろう、おもむろに竿を引き上げた丈也。
しかし、テグスの先にはふやけた煮干が付いているのみだった。
「チェッ…」
「ヒュウ…ポチャ…」
再び竿を投じる。
「………」
「ザァァァァァァァァ…」
降りしきる雨の中、丈也はひたすら釣りに没頭した。
夏なのに顔の辺りが火照ってくるのを感じる。
気のせいか自分の身体から湯気が発せられているような感覚。
丈也はもちろんそんな経験などないのだが、
「これが”ハイになる”ってことなのかなぁ…?」
大脳の奥深くでそんなことを思った。
「ザァァァァァァァァ…」
どのくらいそうしていたのか全然覚えていない。
が、不意に
「パッシャァァァァンッ…!」
「……!?」
何かが大きく水面を跳ねたような音が聞こえたような気がした。
いや、聞こえた。
「ポツッ…」
釣りを邪魔せんばかりに丈也の頬に水滴が当たった。
「チッ…」
雨が降り出してきたのだ。
「ポツッ、ポツッ、ポタポタポタ…ザァ…」
雨足はあっという間に強まった。
「ザァァァァァァァァ…」
川のせせらぎの音もどことなく険しくなる。
「………」
だが、丈也はそこを動こうとはしなかった。
濡れるに任せ丈也は竿を構え続けた。
「ザァァァァァァァァ…」
雨は全く止む気配を見せない。
「パチャパチャ……パチャ…パチャパチャパチャ…」
川面には幾重も波紋が浮かんでは消え浮かんでは消えを繰り返している。
もはやザリガニどころかメダカ一匹さえも釣れる状況ではなかった。
「………」
それでも丈也は竿を垂らしたまま波紋が無数に浮かび続ける川面をうすぼんやりと眺めていた。
「タラッ…ポタポタ…」
丈也の前髪はとうに濡れそぼり髪先から水滴が滴り落ちる。
それでも丈也は動じない。
「ヌチャ…ヌチャ…」
丈也の着ている白いプリントTシャツも過剰に水分を含んで彼の肌にまとわりつく。
「ウッ………」
時折体勢を変えると不快感を覚えたが、時既に遅し。
そんな不快感すらも今の丈也にとっては必要なものであるように思われた。
腰を下ろしていた川縁もあちこちに水たまりができており、当然丈也のジーンズも濡れていた。
「おっ………!」
「グイッ…!」
手応えを感じたのだろう、おもむろに竿を引き上げた丈也。
しかし、テグスの先にはふやけた煮干が付いているのみだった。
「チェッ…」
「ヒュウ…ポチャ…」
再び竿を投じる。
「………」
「ザァァァァァァァァ…」
降りしきる雨の中、丈也はひたすら釣りに没頭した。
夏なのに顔の辺りが火照ってくるのを感じる。
気のせいか自分の身体から湯気が発せられているような感覚。
丈也はもちろんそんな経験などないのだが、
「これが”ハイになる”ってことなのかなぁ…?」
大脳の奥深くでそんなことを思った。
「ザァァァァァァァァ…」
どのくらいそうしていたのか全然覚えていない。
が、不意に
「パッシャァァァァンッ…!」
「……!?」
何かが大きく水面を跳ねたような音が聞こえたような気がした。
いや、聞こえた。