涙は煌く虹の如く
その後何があったかは覚えていない…

でも、全部忘れてしまったわけじゃない。

僕は美久に自分をぶつけた。

女の子とは思えない力で抵抗された。

美久の拒絶の声が聞こえた。

美久が涙を流したのを見た時、僕はとんでもないことをしてしまったと思い力を抜いた。

覚えているのはそこまで…

そして気がついた時、僕は沼のほとりに尻餅をついたような状態で座って呆けていた。

雨はとうに止んで代わりに宵の明星が顔を覗かせていた。

沼には僕の他には誰もいなかった…

僕はやっぱり夢を見ていたのだろうかとしばらく考えたけど、左の頬にジンジンと感じる痛みが出来事を現実だと確信させる…

そのうちカラスか何かが「ギャーッ…」と鳴いたので僕は急いで立ち上がり、来た時と同じようにその場を去った。

走りながら僕は何故か

(もう美久に会わせる顔がない…)

なんて思った…

そう思ったら雨で濡れた顔も乾きつつあったのにまた頬が湿ってきた…



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