涙は煌く虹の如く
別にこの森は丈也や海斗姉弟にとってのみの遊び場ではないだろうから他の子供たちがいてもおかしくはない。
「………」
ただ、彼女たちの会話の内容はあまりにも異質で丈也を驚愕させるものであった…
丈也の気配など全く気づかずに楽しそうに、そして無邪気に会話に没頭する少女たち。
しかし、その無邪気さに不釣合いなアイテムを少女たちは持っていた。
それは黒色をした分厚い札入れだったり、また中学生が身に着けるにはまだ早いアクセサリーの類であった。

「それにしてもジュン、上手くやったなや…!」
「んだんだ…!今回のMVPはジュンだぁ…」
「オラがMVPだってか…!?そうかや…?一番のMVPはどう考えたってあのスケベオヤジだっちゃ…!」
「それもそうだなや…しっかし、あのお偉いはどこまでヘンタイなんだべ…!」
「関係ねぇっちゃ…オラたちがヤラれるわけでもねぇし…」
「んだよ…こんなに小遣い弾んでくれたんだからひとまずは感謝すっぺ…」
「うん…それにしてもジュンがその足首に巻いてるやつ可愛いなぁ…」
「”巻いてるやつ”っておめぇいくつだよ…!アンクレットっつうんだぞ…!」
「そかそかぁ…オラもそいづ欲しいなぁ…!」
「明日また買いに行くべし…!」
「うん…」

少女たちの会話を丈也は青ざめた表情で聞いていた。
おぼろげながらではあるが何が起こったのかを混濁した思考の中で理解しつつあった。
「バタンッ……」 
努めて冷静に聞いているつもりだったがその場にへたり込んでしまった。
そんな丈也を尻目に少女たちの会話は続く。
「しかしさぁ…」
「うん…!?」
「村杉のスケベオヤジが美久をねぇ…」
「それがどうかした…?」
「いや、あんなパーのどこが良いのかなぁと思ってよ…」
「パーでも可愛いからでねぇかや…?認めたくねぇけど美久はこの島で一番美人だし、ヘタしたら東京さ行っても通用すっかもよ…」
「ケッ…あんなおバカがねぇ…!」
「ジュンはホント美久が嫌いなんだな…」
「うんうん、もしかすると美久の顔に嫉妬してんのかも…」
「怒っと…!」
「ゴメン…」
「ゴメン…んでもジュンさぁ…」
「ん…!?」
< 55 / 79 >

この作品をシェア

pagetop