涙は煌く虹の如く
「美久のことが…好きだからだよ…」
そして美久の方を向いて思いを伝えた。
「え……?」
驚く美久。
「私たち…従兄妹同士だっちゃ…そんな……」
「関係ねぇよ、そんなこと…」
「……いつから……?」
「はっきり気づいたのは美久が連れて行かれたのを知った時…」
「そうなんだ……」
俯く美久。
その様子を不安そうに見つめる丈也。
「迷惑だった…?」
「ううん、そんなことないよ…ただ…」
「ただ……!?」
「う…れ…し……」
それ以上は言葉にならなかった。
俯いたまま美久は泣き出した。

「美久…」
丈也は再び腰を下ろした。
そして美久の肩を優しく抱いた。
「………」
無言の丈也。
「ウッ…ウッ……」
泣き続ける美久。
「泣くなよ……」
「ウッ……丈ちゃん……」
「うん…!?」
「ウッ…ゴメンね……私……汚れ、ちゃったよ…」
「美久……」
「私…よごれちゃ……」
美久の悔恨の情を察した丈也は、
「ガバッ…!」
唇で言葉を塞いだ。
「………!」 
「………」
「………」
「………」

しばらくして丈也が唇を離す。
「……どんなことがあっても美久は美久だよ……」
「丈ちゃん……」
再び身体を寄せ合う二人。
「ねぇ、丈ちゃん…」
「うん…」
「私、もうここさいたくない……」
「……!?」
「遠い所さ行きたい……」
「美久……」

美久の言葉の意味するところを丈也は瞬時に理解した。
「一緒に来てけろって行ったら丈ちゃん…来てくれる…?」
「……あぁ……一緒に行くよ…」
不思議と死に対する恐怖感はなかった。
村杉の件でどこか諦念が芽生えたのかもしれない。
「本当…?」
「あぁ…約束する……」
「嬉しい……」
「俺も美久も約束守ったじゃん…だから…これは…」
「うん…これは約束を守った…ご褒美……」

「チャッ…」
丈也はスラックスの左ポケットから飛び出しナイフを出した。
このナイフで誰も傷つけてこなかったことを嬉しく思った。
「丈ちゃん、ありがとう……好きだよ…」
顔を涙でクシャクシャにしながら微笑む美久。
「美久…好きだ…」
丈也の持つナイフの刃が暗闇で妖しい光を放った。
「ザクッ………」
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