涙は煌く虹の如く
(……村杉は僕のことを相当恨んでいたようで裁判の時も何かと圧力をかけてきたみたいだった…だから僕は本当なら3ヶ月くらいで退院できたはずだけど半年間の処分となった…もっとも美久の件や僕に対する圧力の話が島中の噂になってそれが市長の知るところとなって副市長の座を追われたらしい……)
「カツッカツッカツッカツッ……ピタッ…!」
三人は院の正門に辿り着いた。
(村杉だけじゃない…海斗家も島にはいられなくなってしまった…久子おばさんは賢を連れて実家のあるI県へと引っ越した…美久の引き取りは拒否したとのことだった…)

「野瀬丈也君、今日で退院だ。これから色々と試練があると思うが君ならきっと乗り越えられる。頑張って!」
法務教官の一人が声をかけ、丈也へ握手を求める。
「はい、ありがとうございました。」
丈也は教官をまっすぐ見つめ両手で握り返した。
「ガラッ……」
少年院の正門がもう一人の教官によって開けられた。
「頑張れよ…!」
その教官が丈也を外へと促す。
「はい、ありがとうございました。」
「カツッ、カツッ…」
丈也が娑婆へと一歩、また一歩踏み出す。


正門を振り返る丈也。
「ガラッ……バタンッ…」
丈也を送り出すと役目を終えた教官は素早く門を閉めた。
「………」
丈也は深々と門に向かって頭を下げた。
「スッ…タタッ…!」
そして踵を返すと勢い良く歩を進めた。


(……僕は少年院に入ったことで高校受験の機会も逸した…けれどもそんなことは大したことじゃない…!志望校に入るために1年間浪人して絶対に来年受かってやる…!それが僕の今の目標…!)
院の外に並んでいる桜の木ももう間もなく咲こうとしている。


「ワァッ……!」
久しぶりに感じる木漏れ日がとても眩しく、心地良かった。

「カツッカツッ……」
丈也の歩く先に三つの人影が見えた。
(……少年院にいる間一番気になったのは美久のことだ…久子おばさんは引き取りを拒否したけど元々親戚の間では親子は一緒に暮らせないという意見が多かったらしい…そうして野瀬家と海斗家の間で親戚会議が開かれた…その内容がどうだったかは大人の世界のことなので僕は興味ない…それよりも……)

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