23時の情熱
二人で会社を出た。




「タクシー拾おか?送るで」


「ううん。大丈夫。終電間に合うもん。それに週末で人も多いし暗いとこ歩く訳じゃないし」



「…その人の多いのが、危ないんやないか」

地下鉄の改札口。
ここで別々の方向になる。
最終電車のアナウンスが聴こえる。




立ち止まり、ずっと考えていた事を言った。

「……当たり前だけど、私玄さんとずっと一緒にいれるとは思ってない。玄さんには守らないといけない家庭だってあるし」

玄さんは黙って私を見つめている。

「だから、もし私に好きな人ができたら……」




「……その時は何も言わずに私の背中を押して?
迷うな、って」


寂しそうな玄さんの瞳が少し揺れた気がした。




「……ああ。」



自分自身に言い聞かせる。
本当に足を踏み入れていけないのは、ここからだと。


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