23時の情熱
夜、家に帰り、お風呂からあがるとリビングでは父が一人でビールを呑んでいた。


母がお皿を片付けながら、
「瞳子もなんか飲む?」
と聞いてきた。


「ん、自分でやるよ」

言いながら、父のツマミを一つ口に放り込む。
冷蔵庫から冷えた麦茶を出し、自分でコップに注いだ。



「瞳子 今彼氏は?」

父に聴こえない様に、母が小声で言った。



予想外の質問に、びっくりしてむせそうになる。



「……いない。あの会社、オジサンばっかで」
気を取り直し、取り敢えず答える。


「…そう?好きな人もいないの?」


「いない」
思わず即答した。


「やあね、若い子が。早くいい人見つけなさいよ?」洗い物をしながら、母が言う。



「いい人がいれば、ね……」





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