23時の情熱
弾んだ息のまま、涙の溜まった目で彼を睨んだ。
―――ひどい。
――――ひどい。
一番聞きたくなかった名前。
「……頼む、聴いてくれ。ちゃんと……謝らせてくれへんか」
肩で息をしながら呻く様に玄さんが言った。
「……悪かった。謝って済むとは思てへん……けど、弁解ぐらいさせてくれ、瞳子」
「やめて。弁解も謝罪も聞きたくないっ」
ベッドの上で向かい合い、困り果てた顔で訴える彼は、駄々をこねる子供を宥める父親の様に見えた。
「……瞳子…」
「謝んないでよ!
謝られたって私は奥さんじゃない!奥さんにはなれないの!!」
私の腕を掴む力がふっと緩んだ瞬間、手を振り払った。背中を向けてベッドに潜り込む。
「出てって。早く!
もう顔もみたくない!!」