23時の情熱
前を歩いて玄さんが、立ち止まり振り返る。


「まだ怒ってるんか」




「………」




「…当然か。そんな簡単に許してはもらえんわな」


返事に困った。




「瞳子。どうしたら気が済む?」

顔を上げず目だけで見上げた。



「……おまえの気の済む様にしたらええ。俺は何言うたかて言い訳にしかならへんからな」


悲しそうな目で私を見つめる。





「…ひっぱたいてエエで。思いっきり」



「もう逢わへんて言うんやったらそれでもエエし。
…瞳子の好きにしてくれ」



ずるい。そんな選択肢。





「……思いっきりいいんだね?」




「ああ」




左手を振り上げた。




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