23時の情熱


「……ねぇ、瞳子 人事課の新山課長と仲いいの…?」


帰る準備をしようとして更衣室でロッカーから荷物を出そうとしていた時。

―――突然の弥生の一言に心臓が跳ねた。




「………え?なんで?」
と返すのが精一杯だった。



「…うん、ウチの岡田先輩が二人でご飯食べてるの見たって言ってたから。知り合いだっけ、って思って」

―――岡田先輩。
確か入社3年目の営業マン。週末のたびによく飲み歩いてるという噂を耳にしたことがあった。



弥生の心配そうな顔。




言うべきか悩んだ。


「……実はね……大学の時バイトでお水やってたでしょ?…そん時のお客さん。で、顔は知ってた」

咄嗟に出た言い訳。


でも、嘘じゃない。




核心の部分は伏せた。


「……あぁそっか!それで顔見知りなのかぁ。二人で逢ったりする事あるんだ?」


「………」





< 142 / 183 >

この作品をシェア

pagetop