23時の情熱
「……ねぇ、瞳子 人事課の新山課長と仲いいの…?」
帰る準備をしようとして更衣室でロッカーから荷物を出そうとしていた時。
―――突然の弥生の一言に心臓が跳ねた。
「………え?なんで?」
と返すのが精一杯だった。
「…うん、ウチの岡田先輩が二人でご飯食べてるの見たって言ってたから。知り合いだっけ、って思って」
―――岡田先輩。
確か入社3年目の営業マン。週末のたびによく飲み歩いてるという噂を耳にしたことがあった。
弥生の心配そうな顔。
言うべきか悩んだ。
「……実はね……大学の時バイトでお水やってたでしょ?…そん時のお客さん。で、顔は知ってた」
咄嗟に出た言い訳。
でも、嘘じゃない。
核心の部分は伏せた。
「……あぁそっか!それで顔見知りなのかぁ。二人で逢ったりする事あるんだ?」
「………」