23時の情熱
困った顔をしている。

当たり前か。



友達に不倫なんか打ち明けられたら誰だって困るに決まってる。




「……瞳子…ホントに……?」


「……うん………」




軽蔑されただろうか。

呆れられただろうか。



「誰にも言ってないの……?」


黙って頷いた。


「…一人で抱えてたの…?そんな大事な事」


思わず顔を伏せた。

涙が溜まってくるのが分かる。



「好きなの?…本気で新山課長の事」

弥生は幼い子供に言う様な、柔らかな口調で問いかけてくる。


また、黙って頷く。




「早く言ってくれたらよかったのに。
水臭いよ、瞳子」








心が、ふっと軽くなった。




涙が一滴、床でポタリと弾けるのが見えた。






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