2３時の情熱

「おぉ、来たか！おせぇぞ、新山」
既にいい調子になった吉永課長が、ビール片手に玄さんを出迎える。



「悪いな。次長に呼び止められてしもて」
畳に座りながら生ビールを受け取る。


「新山課長〜、お疲れさまで〜す」
「お先に戴いてま〜す」
人事課の社員達が一斉に声をかけると、手を挙げて応える。

「おー、今日は吐くまで呑んで食ってくれ。吉永課長がぜぇーんぶ面倒見てくれるさかいな」
大きな歓声と笑い声が起きる。



途端に何故か緊張してきた。


誰にも気づかれないようにしないと。


そう思うと、必要以上に、見てはいけない気がする。


人事課の男の人に話しかけられた。
「今村さんって彼氏いるの〜？」


「…いませんけど」