23時の情熱
「あぁ、少なくとも俺はライバルだと思ってたね」
吉永課長が何度も頷きながら言った。


「別に俺は思てへんかったぞ」

「俺達のリーグでは新山は間違いなくナンバーワンのクォーターバックだったんだ。そしたらこいつ大事なうちとの最終戦を前に、右肩を壊してやがった。」
玄さんのその右肩を何度も叩きながら更に続ける。



「あの3本の指に入る程の強肩が、ロングパスを投げない。気づいた俺は、第2クォーターに入る時フィールドの外で言ったんだ。
『肩を傷めてるのか』
ってな。そしたらこいつ、何て言ったと思う?」


全員が吉永課長を見つめ、続きを待った。




「『ええハンデになるやろ』
なぁんてぬかしやがった!その上
『俺は最後まで下がらへんぞ』
とか言いやがって。こうなると俺も本気で当たらんと失礼だと思った訳だ」



この試合の結果は知っている。玄さんのチームは負けたのだ。優勝旗を逃した大学最後の試合だったと言っていた。



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