23時の情熱
「瞳子」
声に振り向くと、そこに玄さんがいた。
「何してんねん、こんなとこに一人で」
「……玄……、じゃなくて、…新山課長こそ」
「ええよ玄さんで。こんな寒いとこ誰も来ぃへんわ」
飲みかけの缶コーヒーを差し出された。
少しぬるくなった缶コーヒーを両手で包む。
「ガラにもなくヘコんでたんか?」
「……え」
「エラい喚き散らしてたな。吉村のアホ」
「……見てたの」
「………ちょうど通りかかってな。」
「…そっか。ヤだな、カッコ悪いとこ見られちゃった」
目をそらし、ぎこちなく笑ってみせた。
「おまえの事考えとって、ちょっと息抜きしよ思てここ来たら……おまえがおった。
凄い偶然やな」
玄さんの顔を見上げると、悲しそうな視線がぶつかった。