23時の情熱
私に隠れて奥さんに電話していた。
『ほっとけ』、って言ってたくせに。
――――ううん、隠れて電話してた事に腹がたったんじゃない。
『真っ直ぐそっち行くわ』
―――日本に着いたら真っ直ぐ大阪行くわ――――
そういう事でしょう?
出張から帰って来たら、私より先に家族に会いに行くって事でしょう?
仕方ない事だって頭ではわかってるけど、いざ彼の口からそれを聴くと切なさに胸が押し潰されそうになる。
現実に引き戻される。
視線を感じたのか、玄さんが振り返った。
「……瞳子」