23時の情熱
玄さんが海外出張に出て、1週間が過ぎた。


その間玄さんからの連絡は1度だけ。


食事が合わず、日本食が恋しいと愚痴を溢していた。





電話越しの声を聴きながら、どんどん気持ちが落ち込んでいくのが分かる。それでも声で悟られないように、明るく努めた。




あと1週間。

あと1週間で、彼に告げなければならない。



玄さんはどんな顔をするだろう。



きっと何も言わずに同意するに違いない。

考え直してくれ、という言葉を期待しているわけではないが、アッサリ承諾されても寂しい気分になるのは目に見えていた。




―――未練タラタラ。



男なんて吐いて棄てる程いる。
何も玄さんじゃなくても、彼氏ぐらいすぐできる。



そう、思い込もうとしていた。





自分に言い聞かせていた。





< 176 / 183 >

この作品をシェア

pagetop