23時の情熱
あと5日で玄さんが出張から帰って来る。
別れを切り出すつもりなのに、玄さんの帰りを待ち遠しく感じている私がいた。
逢いたいよ。
電話じゃなくて、逢って声聴きたい。
既に揺らいでいる決心は、整理しようとする頭の中よりも正直に、小さく萎んでいた。
今が楽しければいいと思っていた以前の自分が微笑みかける。
それは悪魔の誘惑。
本当はもっと楽な恋がしたいと願いながらも、彼を解放してあげなければと、偽善者の顔をした自分が諭す。
片方の天使は、残酷にも正論を振りかざす。
私の中の天使と悪魔。
闘うまでもなく、結果は目に見えている。
離れている時間と距離が悪魔を圧倒的優位に立たせ、天使は今にもダウン寸前になっていた―――。