23時の情熱
大きな河の畔に建つ、15階建てのマンション。



その8階に彼の部屋はあった。単身赴任してくる際、会社が用意してくれたのだというそのマンションは、午後11時を廻っていることもあってか、やけに静かだった。



「たまには階段使って歩いて降りなあかんなぁ。おまえの相手するには体力つけんともたへんし?」

…Hな笑い方。



エレベーターを待ちながら私の肩を抱き、軽口をたたく。



ここまで来て、私はまだ迷っていた。


空っぽのエレベーターに乗り込むなり唇を奪われた。

「……んっ…」



大事な家族を連れて乗ったこのエレベーターで交わすキスは、嫉妬と欲情の味がした。



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