23時の情熱
クリスマスが過ぎると、街は一夜にして表情が変わる。
外し忘れたイルミネーションも新年を迎える為の装飾の一部と化し、気の早い門松が申し訳なさそうに店頭に並ぶ。




「熱が出ちゃって」
と情けない声で渚からの電話があったのは昨日の夜。
薬と少しの食材を買って駆けつけると、すっぴんの上赤い顔をしたダルそうな渚が出迎えた。

「馬鹿みたいに雪の中浮かれて温泉めぐりなんかしてるからでしょ。呆れた」

美味しそうにお粥を食べる渚に買ってきた薬を差し出す。年末に入り、もう病院も開いていない。

彼氏との温泉旅行から帰るなり熱を出し、その彼氏に気を使わせるからと私に泣きついてくる始末。

「瞳子なら一人で暇してると思って」


………。
皮肉を言う元気はあるようだった。



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