23時の情熱
その夜は、“今日は特別だから”と高そうなホテルに予約を入れてくれていた。


今夜は泊まり。
ずっと一緒にいられる。

嬉しいのに、テンションは上がらない。
広い部屋だった。オーシャンビューから臨む夜景はとても綺麗で、浴室からもその絶景は観ることが出来る。

浴室から聞こえるシャワーの音。

私はベッドからゆっくり立ち上がり、ハンガーに掛けてある玄さんの上着を手に取ってみた。
ポケットの中。

冷たく硬い物が指先に触れた。


あった。
結婚指輪。


零れそうになる涙を堪え、ジッと見つめる。



私には、お揃いの指輪を持つ資格はない。
10年以上つけ続けているであろうその指輪は、私を嘲笑うかの様に鈍く輝いていた。


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