23時の情熱
「あんま見境いなく女に手ぇだすなよ、とは 言うといた。そのうち悪い女に引っ掛かるで〜、って」


「……どーゆー意味よ、それ」
むくれて言い返す。


「実体験に基づく忠告やんけ。女に溺れて周りが見えへんようになるなよ、っちゅう」

私が納得のいかない顔で黙っていると、ふっと小さく笑い、
「早めに釘刺しとかんとホンマに手ぇ出されたらかなわんしな」


今度は言葉の裏の本音に気がついて、また黙る。顔が赤くなるのがわかった。



「そやろ〜?あいつベッドの中なんてもっと可愛いねんで〜……とも言えへんし?」


「………バカ」
照れる私の肩を抱く。


「おまえみたいなべっぴん男がほっとかへんやろな。ウチの会社の若いのにも手ぇ早いのおるし」



「…心配してんねんで、けっこう」



「……心配なんか要らないよ」
彼の首に手を回しながら、囁く様に言った。


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