23時の情熱
世界中のいろんなビールを置いている、海賊を意識した雰囲気のそのバーは、まだ時間が早いせいか客も疎らだった。



「瞳子ちゃんお酒強いんだね」

「そうかな。確かに嫌いじゃないけど」
無愛想な返事になった。


あまり弾んでいるとはいえない会話をしながら、二杯目のビールをおかわりした。
キャバクラでバイトしていた時はつまらない話でも笑顔で相手ができたのに、今日は笑えない自分を自覚した。



「なんかゴメンね、今日は。強引に誘っちゃって」



「ううん、そんなことないよ?今日は呑みたい気分だったし」




…ゴメンは私だよ。

こんなやるせない気持ちのまま、あなたといるのに。



ようやく芽生えた罪悪感は玄さんにではなく、目の前ですまなさそうに笑っている清水くんにだった。



< 99 / 183 >

この作品をシェア

pagetop