恋の行方
「…ちゃん…おちゃん……澪ちゃん」
「はっ、はいっ!」
完全に自分の世界に飛んでいた私は、来栖さんに肩を揺すられて、戻ってきた。
「聞いてた?」
「きっ、聞いて、なかった」
不審そうに問いかけてくる来栖さんが怖くて正直に答えてしまった。
「なに考えてたの?」
「べっ、別に何も…」
「…数学、嫌い?」
「あんまり、好きじゃない」
説明を聞いてなかった事を数学が嫌いだからととったのか、そんな事を聞いてくる来栖さんに、内心ビクビクしながらこれも正直に答えた。
「じゃ、もっとみっちりやらないとね」
嫌な笑みを湛えた来栖さんに、ヒクリと顔が引きつる。
…あの満面の笑顔には逆らえそうにない。