恋の行方


「目、覚めた?」

唐突に聞こえてきた声に反応して、じんわりと汗ばんだ身体を持ち上げると、来栖さんが私の手を握ったまま私を見つめていた。

うっすらとライトの光を浴びたその顔は無表情で感情を読み取ることが難しい。


「来栖、さん…?」
「澪ちゃん、俺は君が好きだよ」
「!…なに、言って」

唐突にそんな事を言われて驚く私に変わらず無表情のまま、瞳だけが強い力を放って私を捉えた。

「どうでもいいなんて思ってない。澪ちゃんが帰って来るまでどんな気持ちで待ってたかわかる?」
「……」
「…心配でどうにかなりそうだった」

痛くて痛くて苦しくて辛い。
そんな顔をして、握っていた手に力を込める来栖さん。


「…好きだよ」

もう一度紡がれる想いに、ザワザワと心が落ち着かなくなる。

「…知らない。出てって…」
「澪ちゃん」
「出てって!!」

手を振り払い、睨み付ける。
困ったように眉を下げ、なにか言葉を続けようとする来栖さんにもう一度「出てって」と強く言い放つと、開きかけた口をきゅっと閉じて、諦めたように部屋を後にした。


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