恋の行方


「お兄ちゃんが好きなのは構わないけど、いつまでもお兄ちゃん離れ出来ないのは困るね」
「そんなの来栖さんには関係ないでしょっ!?」

だんだん低くなる声に小さな恐怖が芽生えたものの来栖さんの言った事にムッとして強く言い返した。

「関係ない?」

絶対零度の冷ややかさを湛え、ゆっくりと確認するように問い返しながら、掴んでいた私の手首をグッと引き寄せて上に持ち上げ、真上から見下ろされた。

自然と私の首は反り返っていて、来栖さんの顔がなければ天井が見えていだろう。
まるで脅されているみたいだ。


「俺の話聞いてた?俺は澪ちゃんが好きだって言ってるんだ」
「だっ、だからなに…」

整った顔がアップになって恥ずかしいのと、さっきからずっと眉さえ動かさずに表情を変えない来栖さんに腰が引ける。

「関係ないなんて言わせない。そんな理由じゃ納得しない」
「…知らない。私には関係ない」
「…それって澪ちゃんの口癖?」
「…っ」
「でもそんなの許さないよ。関係ないなんて言葉で終わらせない」
「どうして、どうして私なの!?来栖さんなら他の人でも…」

来栖さんから離れようと身を捩じらせ、手首に力を込めてみても、びくともしない。
それどころかさらに力を入れて私を抱き締めるように腰を引き寄せた。


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