恋の行方


「いいの?」
「えっ?」

さっきまでの絶対零度の空気と無表情な顔が奪われたように拭い去られ、微かに瞳が悲しそうに揺れている。

「俺が他の人を好きになっても」
「だ、だからそんなの…」
「本当に?」

視線を逸らした私の言葉を遮り、手首を掴んでいた右手で顎を持ち上げられ、無理矢理目を合わせられる。

「知らない!!帰って!」

その目を見てるのが怖くて、渾身の力を振るい来栖さんを押し退ける。

「澪ちゃ…」
「帰ってっ!!」

2歩ほど後退した来栖さんがもう一度私に触れようとするその手を、強く振り払うとそれ以上その手が私に伸ばされる事はなかった。


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