恋の行方
ハッとして口を押さえたけど、全然意味ない。
恐る恐る来栖さんを見上げると、あの意地の悪い笑顔を浮かべてた。
まるで獲物を捕らえたような鋭い目をしてる。
「ちっ、違う。今のは、そうじゃなくて」
「違わない。今のが澪ちゃんの本音なんだ」
「違う!私は来栖さんが誰と何をしようと関係ないんだから!」
確信したような、ぶれのない言い方に意地になって否定する。
「へぇ…いいんだね?」
スッと目を細めて、突き放すように言われた。
冷たいその目に、どんどん不安が込み上げてきて苦しくなってくる。
本当はさっきから来栖さんが誰かとって思うと、私の中でどす黒いものがドロドロと流れ出てくる。
「…そう」
何も言わない事を肯定と取ったのか、私を軽く睨んで玄関へ足を向けた。
その背中に心臓を鷲掴みにされて潰されてしまいそうになる。